学資保険で保険会社から貸付を受けられる
学資保険で貸付を受けられる仕組み
学資保険に加入している方が、保険会社からお金を借りられる制度がありますが、これはどのような仕組みになっているかご存知でしょうか。
この制度は契約者貸付制度というもので、加入している保険を担保として保険会社が加入者に対して貸付を行うという仕組みになっています。
カードローンや通常のローンで貸付を受けるためには、貸付を受ける人の年収や勤務先などの情報をもとに、慎重な審査が行われます。
ところが学資保険の契約者貸付制度による貸付では、このような審査は行われません。
それは保険会社が学資保険の保険料からプールしている保険の解約返戻金を原資としてお金を貸しているからなのです。
保険会社では学資保険以外でも契約者貸付制度を設定していますが、解約返戻金がない保険では貸付原資が存在しないため、契約者貸付制度を利用できません。
返戻率が高い学資保険では、保険料の多くの部分が解約返戻金となっているため、契約者貸付制度を利用することができるのです。
学資保険の契約者貸付制度を利用すれば、急にお金が必要になったときでもすぐにお金を用意できるため、学資保険を解約せずにすみます。
契約者貸付制度の申請方法
契約者貸付制度を利用するためには、申請書類の提出が必要となります。
保険会社ごとに所定の書類があるため、ご自身が学資保険に加入している保険会社に問い合わせてください。
一般的な貸付の流れは、保険会社のコールセンターやwebから貸付の申し込みを行い、必要な書類を取り寄せます。
書類が届いたら必要事項を記入して保険会社まで返送すると、早いところでは即日、遅くても約1週間後には銀行口座にお金が振り込まれます。
契約者貸付制度では通常のローンのような審査が不要で、申し込みから融資までの期間が短い点もメリットです。
なお、契約者貸付を受けられるのは契約者本人のみとなっているため契約者本人が申し込み、銀行口座の名義も契約者本人のものを指定してください。
また保険会社によっては契約者貸付制度専用のカードを発行していて、手近にあるATMから簡単に借入ができるシステムになっているところもあります。
この場合なら、即時の借入が可能です。
学資保険の貸付限度額はいくら?
学資保険で契約者貸付制度を利用して借入できる金額は、おおむね解約返戻金額の70~90%となっていますが、これまでに積み立ててきた金額によって限度額も変わります。
つまり、学資保険に長く加入していれば支払ってきた保険料の金額も大きくなっているため解約返戻金も多くなり、その分だけ貸付を受けられる金額も多くなるのです。
現在ご自身がいくら借りられるのかを正確に知りたい場合は、学資保険に加入している保険会社に問い合わせると確実です。
なお、かんぽの学資保険を月払いしている場合なら、毎月送られてくる明細に貸付限度額が記載されているので、それをご覧ください。
契約者貸付制度で借り入れた場合の返済方法
契約者貸付制度で借り入れたお金の返済方法は、
- 一括返済
- 分割返済
- 利息のみ返済
から選ぶことができるため、無理のない方法で返済していくことができます。
また貸付限度額内であれば、返済の途中でも繰り返し貸付を受けることが可能です。
つまり、一度借り入れた金額をまだ返し終わっていなくても、貸付限度額に達していなければ追加で借り入れることができるのです。
ただし借入を繰り返していると借入総額は多くなり、返済期間も長くなってしまうため、いくら低金利で借入ができたとしても支払う利息はどんどん膨らんでいくため、注意が必要です。
さらに返済額も多くなるため支払いが苦しくなることも考えられます。
かんぽの契約者貸付制度の返済期間は1年
一般の生命保険会社で契約者貸付を利用した場合、返済期間はとくに決められていないため、保険の満期までに返済すればOKです。
しかしかんぽの契約者貸付制度では、原則返済期間は1年でもう1年の延長が認められた場合は2年となっているのでご注意ください。
また、返済方法は「一括返済」「一部返済」のほか、借入金と同じ額をもう一度借り入れることで貸付期間を更新する方法の3つとなっています。
もし1年以内に返済できなければ金利があがり、借入後1年以内の金利は年2.50%ですが、1年を経過したあとの金利は年2.5625%となります。
また、返済を終える前に学資保険の満期が到来した場合には、満期金から借入金と利息の合計額が返済に充てられ、返済期限の2年が過ぎても返済できなければ、保険金が減額されて返済に充てられます。
学資保険の貸付で気を付けたいこと
貸付金には複利で利子が付く
学資保険の契約者貸付制度では加入している保険を担保に貸付を行っているため、カードローンなどの無担保ローンに比べるとかなりの低金利でお金を借りることができます。
通常のカードローンだと年利は10%以上となっていますが、契約者貸付制度での貸付金利は3%程度です。
ただし、契約者貸付制度の金利はカードローンと同様に複利となっているため、借入期間が長くなるほど返済額も大きくなります。
たとえば年利3%で100万円を借り入れた場合、最初の年には元利合計金額は103万円です。
さらに返済せずに2年目を迎えると103万円に3%の利息が加算され元利合計金額は約106万円となります。
さらに次の年には約109万円…という具合に、借入額は膨らんでいくのです。
借入額が増えると返済が追いつかなくなりますが、とりあえず利息のみを返済していれば大丈夫です。
とはいえ、利息だけ返済している場合では元金が減らないため、借入が長期化してしまってさらに返済額がふくらんでいく危険性があるのです。
高い利息がつくこともある
契約者貸付制度での貸付金利は、カードローンに比べると低く抑えられていますが、返戻率が高い学資保険の場合だと、意外と高い利息になってしまうことがあります。
俗に「お宝保険」と呼ばれている平成初期頃までに契約した保険では、保険の予定利率が6%程度のものがありました。
一般に契約者貸付制度での貸付金利は、保険の予定利率に1~2%上乗せして設定されています。
もし「お宝保険」で契約者貸付制度を利用すると、金利は7~8%という高金利になってしまうのです。
超低金利が続いている昨今になぜこんな高金利になってしまうのかというと、契約者貸付制度での貸付金利は、借り入れたときの金利ではなく保険を契約したときの金利を元にして決められるからです。
現在のところ学資保険で契約者貸付制度を利用した場合、貸付金利はおおむね3%くらいとなっていますが、加入時期によっては現在より高い金利が設定されているものがあるため注意が必要です。
一般に返戻率が高い学資保険では返済利率も高くなるため、複数の学資保険に加入されている場合なら、返戻率の低い保険を利用して貸付を受けると良いでしょう。
学資保険で借りたお金を返せないとどうなる?
保険が解約になってしまう
契約者貸付は、解約払戻金の範囲内であれば審査なしで何度でも貸付を受けられます。
そのためつい気軽に借りてしまい、気がつくと返済が難しいほどの額になってしまっていることもあります。
もし、借り入れたお金を返済しないままにしていた場合、たとえ保険料を毎月支払っていたとしても保険契約が失効あるいは解除されてしまうことがあるのです。
「そんなバカな・・・」と思われるかもしれませんが、借りたお金と利息の合計金額が解約返戻金の金額を超えてしまった場合、保険会社はそれ以上貸付を続けることはできなくなり、学資保険を失効させることで契約の終了とともに貸付金を精算します。
つまり、契約者貸付制度を利用してお金を借りると、場合によっては保険そのものが消滅してしまうということもありうるのです。
もちろん借りたお金を完済すれば、保険の消滅を防ぐことはできます。
けれども、保険契約の失効寸前まで放置した場合の借入額はかなり高額になっているはずで、そう簡単に返済できるものではないでしょう。
なんとか学資保険を解約せずにすませたいと考えて契約者貸付制度を利用したのに、結局学資保険を消滅させてしまうなど、元も子もないことです。
契約者貸付制度でお金を借りる場合はあくまでも一時的なものと心得て、早めに返済するようにすることを考えましょう。
受け取れるお金が減ってしまう
契約者貸付制度を利用して借り入れたお金の返済が滞ってしまうと、保険金や生存給付金、お祝い金など受け取れるはずのお金が返済に充てられることがあります。
保険金やお祝い金などは、お子さんの教育プランに基づいて設定したはずです。
プラン通りの金額を受け取れないことになってしまうと教育資金が足りなくなり、教育プランそのものを変更せざるを得なくなるでしょう。
これでは肝心の時に学資保険が役に立たないことになり、解約せずに保険料を支払い続けてきた意味がなくなってしまいます。
契約者貸付制度での借入はまぎれもない借金
契約者貸付制度を利用した借入の原資はご自身が支払った保険料です。
保険会社は担保を取ったうえで貸付限度額内までしか貸し付けないため、貸金業者のような返済不履行のリスクはありません。
そのため一般のローンとは比べ物にならないほど簡単にお金を融通してくれますが、借りたお金は利息を付けて返さなくてはならないのです。
もし返せなければ、お子さんの夢を実現するためにがんばって保険料を支払ってきた学資保険が消滅してしまうことになりかねない、ということをお心置きください。
まとめ
契約者貸付制度を利用すると、予期せぬ失業や減収に見舞われたときでも、学資保険を温存したままお金を借りることができます。
契約者貸付制度での借入は、大切な学資保険を担保にした借金であることを忘れないでください。
担保を取られた借金を返さければ、担保は債権者のものになってしまうという理屈は、住宅ローンを支払えなくなったときに自宅がどうなるかを考えればよく分かるでしょう。
契約者貸付制度は一時的な利用に抑え、計画通りに教育資金を確保できるようにしていただければと思います。