学資保険はもういらない?
超低金利のあおりを受け、学資保険の返戻率は年々下がっています。
そのためか、「学資保険は損」「これからは投資信託の時代」に始まり、最近では学資保険不要論まで飛び出しています。
確かに金融商品としてみれば、学資保険はさほど有利な商品ではありません。
18年間引き出すことができず、中途解約すると元本割れする流動性の低さに加えて、大きく増やすことが難しいためです。
とはいえ保険会社が破綻しない限り、満期時に保険金を確実に手にできるうえ、契約者の万一にも備えられる学資保険のメリットは見落とせません。
そもそも投資信託とは
投資信託は初心者向きの投資
投資信託とは、投資家から集めた資金を元手に投資を行い、得られた利益を投資金に応じて投資家に分配する投資商品です。
まとまった資金をプロが的確に運用することで、高い利回りが期待できます。
また、株を購入するためには数十万円以上の資金が必要となりますが、投資信託ならお小遣い程度の資金でも購入できるため、投資の初心者でも気軽に始めることができるのです。
投資信託は商品が豊富
投資信託では、すでに数千本もの商品が運用されています。
つまり投資する人のニーズに応えられるようにさまざまな種類の商品が用意されているのです。
どのような商品があるのかを簡単に説明すると、以下のようになります。
- 投資先:国内・海外
- 投資対象:株式・債券・不動産
ひとくちに海外といっても、先進国への投資か新興国への投資かによって利回りが違ってきます。
また全世界投資など、日本・日本以外の先進国・新興国の全てに投資する商品もあります。
そして投資対象それぞれに国内・海外の区分があり、投資期間や許容できるリスクなどに合った商品を選択できるようになっているのです。
さらに、運用方針も選択できます。
運用方針には「インデックス型(パッシブ型)」と「アクティブ型」の2種類があり、日経平均株価などの指標と連動するものが「インデックス型」、インデックス型を上回る成績を目指すものが「アクティブ型」です。
値動きは「アクティブ型」のほうが大きく、「インデックス型」よりおおむねハイリスク・ハイリターンとなっています。
積立投信は学資保険の代わりになる?
投資信託にはさまざまな商品がありますが、学資保険の代わりとして考えるなら積立投信が選択肢となります。
積立投信とは、投資信託商品を毎月少しずつ買い増しながら積み立てていくものです。
ネット証券を利用すればワンコイン(100円)から始められる商品もあるため、手軽にスタートできる点も魅力です。
さらにお金ではなくポイントを使って積立できる投資商品などもあり、すでに投資は資産家だけが行うものではなくなっています。
人気が高まるジュニアNISAとつみたてNISA
投資信託の高い利回りと利用のしやすさを取り上げ、学資保険の代わりに投資信託や積立投信をすすめる声が増えています。
とくにジュニアNISAとつみたてNISAの人気が高いようです。
いずれも国が積極的に推進している制度で、特に税金面のメリットが期待できますが、いずれも元本が保障された商品ではありません。
投資信託を学資準備のメインにしてはいけない!
投資信託は預貯金とは別のモノ
かつては証券会社や信託銀行の窓口でしか取り扱われておらず、売買に必要な手数料も高額だった投資信託ですが、ネット証券が登場してからは、自宅に居ながら安い手数料で投資信託を購入できるようになりました。
このように投資信託の敷居が低くなりだれでも気軽に始められるようになったことは、大変喜ばしいことです。
しかし投資信託はあくまでも投資であり、預貯金とは性格が異なるものであることを見落とさないようにしなければなりません。
預貯金と投資信託の違いを以下の表にまとめましたので、ご覧ください。
定期預金 | 投資信託 | |
元本の保証 | 1,000万円まで保証 | 元本割れすることがある |
預金保険 | 対象 | 対象外 |
利息(収益分配金) | 確定している | 運用成果次第 (ゼロまたはマイナスになることも) |
手数料 | 不要 | ・購入手数料(販売手数料) ・運用管理費用(信託報酬) ・信託財産留保額(解約料) ※ノーロードの場合、購入時手数料(販売手数料)は不要 |
税金 | 利息に対して20.315%が源泉分離徴収 ※2038年1月1日以降は20% | 収益分配金や換金時の譲渡益に20.315%が課税 ※2038年1月1日以降は20% ※確定申告が必要だが、源泉徴収ありの特定口座で取引を行っている場合は不要 |
知っておきたい投資信託と預貯金との違い
積立投信は積立預金のように気軽に利用できますが、あくまでも投資信託商品であることに変わりはありません。
そのため、預貯金とはさまざまな点で違いがあることを見落とさないようにしたいものです。
まず、投資信託では元本が保証されていません。
さらに預金保険制度の対象となっていないため、万一金融機関が破綻した場合に一般の預貯金のようには保護されません。
預貯金より高いとされる利息は確定されたものではなく、運用成果によってはゼロあるいはマイナスになることもありえます。
変動金利でない一般的な預貯金では、予め設定された利率が満期まで変わりません。
途中で金利が上がった場合、預け替えをしなければ損をすることになりますが、元本が減ってしまうことはありません。
また投資信託では運用成果に関係なく、手数料が発生します。
投資信託に掛かる3つの手数料
投資信託では、以下のような3つの手数料が必要となります。
購入手数料(販売手数料)
購入手数料(販売手数料)は、投資信託を買うときに証券会社や銀行などの投資信託を販売している会社に支払う手数料で、販売会社の収入となるものです。
購入手数料は投資信託の種類や販売会社によって異なりますが、一般的に購入金額の1〜3%(+消費税)程度が必要となります。
例えば、購入手数料が2%(税込2.16%)の投資信託Aを10万円で購入すると、購入手数料は2,160円です。
購入手数料は別途支払うため、実際に10万円の投資信託Aを買うために支払う金額は、10万2,160円です。
現在メガバンクの定期預金の年利は0.001%(税抜き前)となっていることと比較すると、投資信託の購入手数料率はかなり割高といえます。
なお「ノーロード投資信託」を選べば、購入手数料は無料です。
また、購入手数料は購入時のみに掛かるため、長期保有することで相対的に手数料率を下げることができます。
運用管理費用(信託報酬)
運用管理費用(信託報酬)は、投資信託を保有している期間ずっと必要となる費用で、投資信託の販売会社・運用会社・信託銀行の3社に支払われます。
運用管理費用は投資信託の種類や販売会社によって異なりますが、投資信託の純資産総額に対して一定の割合(%)が決められており、一般的に年0.5〜2%(+消費税)程度となっています。
先ほどの投資信託Aの信託報酬が1.5%(税込1.62%)とすると、1年間に1,620円が差し引かれます。
運用管理費用は運用実績とは無関係に発生する必要経費で、もし運用が思わしくなく10万円が9万円に減ってしまったような場合でも、1年後にきっちり1,620円が差し引かれるのです。
なお、「インデックス型」の投資信託は信託報酬が0.5%前後と低めに設定されているので、特に長期保有を考えている方にはおすすめです。
信託財産留保額(解約料)
信託財産留保額(解約料)は、投資信託を換金するときに掛かる費用です。
金額は投資信託の種類や販売会社によって異なりますが、0〜0.5%掛かります。
なお「インデックス型」の投資信託には信託財産保留額が無料のものが多くみられます。
投資信託のポイントは売却のタイミング
投資信託でいくら高いリターンとなっていても、タイミングよく売却して利益確定しなければ絵に描いた餅にすぎません。
投資信託での運用はプロが行いますが、いつ売るかは自分で決めなければならないのです。
投資信託は常に値動きしているため、できるだけ値上がりしたタイミングで売却できれば、利益を最大化できます。
しかし多くの場合、値下がりしたら不安になって売却してしまいがちで、適切なタイミングでの売却は難しいものです。
なお売却には手数料と税金が発生するという点に注意が必要で、ひんぱんに売り買いを繰り返すことはおすすめできません。
積立投信を学資準備のメインにすることは危険
積立投信は長期保有することが勧められているため、学資準備に向いていると考えられています。
しかし、もし学資が必要になったタイミングで、リーマン・ショックのような事態に見舞われたら…。
投資信託の場合、売却しなければ利益も損も確定しないため、投資信託を学資準備のメインにしていなければ、そのまま値上がりするまで保有し続ければ問題はありません。
投資信託をメインに学資準備を行っていた場合、投資額を大きく割り込んでしまうことが分かっていても売却を見合わせることはできないでしょう。
このように、必要となる時期が確定している資金である学資の準備を積立投信でメインに行うことは、大変危険なのです。
学資保険は安全・確実な学資準備手段ですが、返戻率が下落傾向にあることや、金利上昇とインフレに対応できないことは事実です。
とはいえ、絶対に確保しなければならない教育資金をリスクにさらすことはできません。
必要となる最低限度の教育資金は学資保険で安全・確実にキープし、余力で投資信託や積立投信を活用したいものです。
なお、祖父母の援助が期待できる場合には、ジュニアNISAの検討もよいでしょう。