奨学金制度の今
子供に教育を受けさせるにあたって、奨学金を利用する人が増えています。
この制度を利用することで、お金にゆとりのない家庭でも、わが子を高校や大学に進学させることができ、子供も学費を稼ぐために無理なアルバイトをしなくてもいいからです。
しかしその一方で、奨学金の返済が社会問題になっています。
返済負担が大きいことで、転職ができない、結婚ができない(生活ができない)などの支障が出てきているんです。
奨学金は今、どういう状況になっているのでしょう。
過去の歴史も踏まえながら見ていきます。
奨学金制度とは
奨学金制度とは、国が憲法に定めて推進している教育政策のひとつで、教育費を独立行政法人(JASSO)や企業から借りて教育を受ける仕組みのことです。
1943年に財団法人大日本育英会が奨学金をスタートさせたのですが、そのころは無利子で奨学金を借りることができていました。
その後、財政投融資資金を活用した有利子奨学金が創設され、これまで以上に利用しやすくなったことから、進学率も大幅に増えていった経緯があります。
経済的にゆとりのない家庭の子供でも、高校や大学で学ぶことができ、さらに就職できている結果も出ています。
奨学金の種類は
現在は大きく分けて「給付型」「貸与型」があります。
給付型は借りたお金を返さなくていい返済義務のない奨学金です。
貸与型は無利子で借りれるもの(第一種)と、有利子で借りるもの(第二種)とがあります。
現状の給付状態を確認すると、奨学金の約98%が貸与型で、給付型は2%にとどまっている現状です。
奨学金受給者(奨学生)は増加している
現在、奨学生は増加傾向にあります。
理由としては、授業料や入学金などが高くなっている反面、生活経済状況がこれまでと変わらない、もしくは収入が減る状態があるからです。
昔はそんなにお金がかからなかった国立大学でさえも、初年度の平均額として81万7800円(リクルート調査)かかります。
私立大学の費用(約130万円)に近づく勢いです。
大学進学で必要になるお金はそれだけではありません。
受験前の進学塾・学習塾への費用や、大学入学後の一人暮らしでの生活費、大学の理系学部に進学すれば授業で必要な物を用意するためにもお金がかかります。
このような現状から、奨学金制度を利用する家庭が増加していると考えられています。
奨学金制度のこれから
広く知れ渡っている奨学金制度も、利用者が増えることで問題が発生してきています。
それが、冒頭でもお伝えしている返済問題です。
問題が生じているのに、奨学金受給者が増えるのは、それなりのメリットもあるからなのですが、それが本当にメリットなのかも疑問視され始めています。
奨学金制度はどうあるべきなのか、見ていきましょう。
奨学金のメリット
奨学金はあくまでも借金です。
教育を受ける期間を終了すれば、必ず返済しなければなりません。
先ほど、貸与型奨学金には無利子型と有利子型があるとお伝えしましたが、日本学生支援機構のデータによると、受給者の約6割が有利子型を利用しています。
学校を卒業しスグに就職したとしても、働き始めは給料が少ないもの。
その給料から返済(利息含む)していくとなると、なかなか厳しい現実があるようです。
実質、返済遅延率も平成7年度以降増加傾向にあります。
さらに、返済があるために転職もしにくく(転職をすると給料が下がるため)、思い通りの人生設計が立てにくくなる現状も否めません。
卒業後の返済が奨学生の負担になること、これが大きなデメリットになりますね。
奨学金返還をカバーする制度はあるが・・・
奨学金が返済できない状況に陥った時、利用できる制度は用意されています。
減額変換精度 返還期限猶予制度 返還免除制度などです。
しかしどの制度を利用するにしても、一定の条件に達しないと利用できない状況があります。
収入が少ないから・・だけでは、適用されることは難しい状況です。
奨学金の今後
日本学生支援機構では奨学金返還制度を充実させ、少しでも奨学生の負担を減らす動きを始めています。
- 給付型奨学金制度の本格実施
- 第一種奨学金希望者全員に対する貸与の実施
- 所得連動返還型奨学金制度(所得連動返還方式)の実施
等です。
しかし、これらの制度は平成29年度から試みられているもので、本格的に稼働されているとは言い難い状況。
まだまだ、奨学金返還問題をクリアするには時間がかかりそうです。
2020年から高等教育の就学支援新制度が始まりました! 続きを見る
大学の無償化とは?「高等教育の修学支援新制度」の仕組みと利用方法
奨学金以外で教育費用をまかなうにはどうすればよい?
現在と、これからの奨学金制度の状況をお伝えしましたが、奨学金だけで教育費用をまかなうには、かなり厳しい現状があることがわかりましたよね。
では、どのようにすれば生活に影響を及ぼさずに教育を受けられるのでしょう。
方法は大きく分けて次の2つがあります。
- 貯蓄性のある学資保険を利用する
- 奨学金返還をサポートしてくれる企業ではたらく
具体的に説明していきましょう。
貯蓄性のある学資保険を利用する!
お金を蓄える手段として学資保険は必要でしょう。
銀行でもお金を積み立てることはできます。
しかし、今は金利が低い時代で、銀行で積み立てをしてもあまり得になるとは考えられません。
その点、学資保険は返戻率が高いものもありますので、お金を効率的に貯める方法としては有効です。
ただし、返戻率や返戻金の額で選ぶのではなく、あくまでもわが子の教育費を用意しやすく、使いやすい学資保険か、また生活の負担にならないかどうかを見極めましょう。
中学・高校・大学入学のタイミングで祝金が出るものや、大学に入ってから定期的に保険金がもらえるもの、18歳で保険金がもらえるものなど、様々な商品が用意されています。
どれが自分たちの生活に一番いいのか、ライフプランを考えて選ぶようにしてください。
奨学金返還をサポートしてくれる企業ではたらく
最近では、奨学金返還をサポートしている企業が出てきています。
まだまだ大手企業でしか実行できていない制度ですが、企業としても人材確保の一環として、奨学金返済サポート制度を導入するところが増える可能性はあります。
奨学金制度を利用する前に
教育を受ける権利を守るための奨学金制度が、教育を受けた後の生活に大きく影響している現実。
これを踏まえて、奨学金の利用をどうするべきかは考える必要があります。
それに加えて、学費が上がる一方の教育に対して、各家庭でどう対処していくか生活設計を立てることも大切です。
現実は収入が少ない中での貯蓄は大変となりますが、学資保険の保険料は、保険会社の担当と相談できますし、自分のライフプランにあわせて設定することも可能です。
さらに銀行よりも貯蓄性が高く、確実にお金を貯めることができます。
学資保険のプランを自分の生活にあわせてうまく利用することが、学資金の準備がうまくできるかどうか影響してきます。