子供の教育については、昔も今もいろいろと議論がされています。
最近では(2019年5月10日)「大学等における就学の支援に関する法律(通称:大学無償化法)」が成立しました。
これについては教育関係者や評論家など、多くの人が様々な反対意見や賛成意見をネットにアップしています。
メリットやデメリットも報じられ、それぞれの考えには納得できる点もあります。
しかし、この制度がどんな家庭に該当するのか、そもそも効果的なのかそうでないのか、それを判断するには、どんな内容なのかを知っておく必要はあります。
さらに学資金を準備するにも、この制度がどう絡んでくるのかも気になるとことです。
今回は「高等教育の修学支援新制度」について、説明・解説していきます。
大学等における就学支援に関する法律 とはどういうものか
文部科学省のHPでは「学びたい気持ちを応援します」のタイトルで説明がされています。
まずはその内容を簡単に説明してきましょう。
高等教育の就学支援新制度って何?
授業料が免除されたり、減額してもらえる、もしくは返済なしの奨学金がもらえる制度です。
お金がないことが要因で、大学や専門学校などの進学をあきらめる若者がいることから、勉強意欲の高い人たちを金銭面で支援するために法律化されました。
2020年4月からスタートされます。
制度対象となる教育機関は?
高校、大学・専門学校が対象となっていて、約97%が国の指定を受けています。
数が多いので、「高等教育の修学支援新制度の対象機関リスト」でご確認ください。
具体的な対象者はどんな子供たち?
大きく分けて2つの要件を満たす人若者が対象です。
- 低所得家庭であること
- 勉強に対して意欲があること
「低所得家庭である」とは
低所得家庭とは「住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯」と明記され、税金の支払い義務に達しない低収入(年収が低い)家庭のことを言います。
対象者と年収の目安は次の表のとおりです。
支援対象者 ※本人が18歳、中学生が15歳の場合 | 年収の目安 |
住民税非課税世帯の学生 | ~約270万円 |
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生 | ~約300万円 |
~約380万円 |
上記の表はあくまでも目安です。
自身の家庭が該当するかどうかは、日本学生支援機構の進学資金シミュレーターを使って調べてみてください。
(文科省HPでもこの方法を進めています)
「勉強に対して意欲があること」とは
進学する目的がはっきりしていて(何を勉強したいかが明確)、進学後も勉強に一生懸命取り組む意思・姿勢のある人のことを指しています。
意欲があると認められるためには、良い成績をキープする、授業はきちんと出席するなど目に見えた成果が必要で、卒業できない状況や出席率が悪ければ、支援は停止されます。
支援金の額は?
各家庭の状況に応じての支援額となるため「○○万円支給」とハッキリした金額はお伝えしにくい状況です。
ただ、文科省HPでは例を挙げて支援額を表記していますので、この内容を目安にしてもらえるとよいでしょう。
授業料等減免の上限額(年額)
住民税非課税世帯の学生の場合
※住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は、住民税非課税世帯の学生の2/3又は1/3の支援額となります。
※大学2年次以降から支援を受ける人は「入学金」の免除・減額は受けられません。
<昼間性>
国公立 | 私立 | |||
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約17万円 | 約39万円 | 約25万円 | 約62万円 |
高等専門学校 | 約8万円 | 約23万円 | 約13万円 | 約70万円 |
専門学校 | 約7万円 | 約17万円 | 約16万円 | 約59万円 |
<夜間性>
国公立 | 私立 | |||
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約14万円 | 約27万円 | 約14万円 | 約36万円 |
短期大学 | 約8万円 | 約20万円 | 約17万円 | 約36万円 |
専門学校 | 約4万円 | 約8万円 | 約14万円 | 約39万円 |
<通信課程>
私立 | ||
入学金 | 授業料 | |
大学・短期大学・専門学校 | 約3万円 | 約13万円 |
給付型奨学金の給付額
住民税非課税世帯の学生の場合
※住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は、住民税非課税世帯の学生の2/3又は1/3の支援額となります。
<昼間性・夜間制>(月額)
国公立 | 私立 | |||
自宅生 | 自宅外 | 自宅生 | 自宅外 | |
大学・短期大学 専門学校 | 29,200円 (33,000円) | 66,700円 | 38,300円 (42,500円) | 75,800円 |
高等専門学校 | 17,500円 (25,800円) | 34,200円 | 26,700円 (35,000円) | 43,300円 |
※生活保護世帯で自宅から通学する人および児童養護施設等から通学する人は、( )内の金額となります。
<通信課程>(年額)
私立 | ||
自宅生 | 自宅外 | |
大学・短期大学・専門学校 | 51,000円 |
手続き方法とは?
本人からの申請が必要で、大学・短大・高等専門学校、専門学校に在学中の人と、これから進学する人とは手続きやスケジュールが異なります。
在学中の人の場合
自分が対象かどうか確認 在学する学校が対象か確認
▼
学校から関係書類(給付型or授業料減免)をもらって提出
▼
審査結果が出たら本人に通知される
進学する人(給付型希望)の場合
7月ごろに自分が対象になるかどうかを確認し学校の先生と相談してJASSO申込む
▼
12月ごろに審査結果の通知が来る
▼
4月 入学後にJASSOに進学届を提出
進学する人(減免希望)の場合
4月 進学時に進学先の学校で手続きをおこなう
※詳細が各学校で確認してください。
「大学等における就学の支援に関する法律」は効果的なのか?
さて、制度がどんなものかについては、文科省HPを参考にお伝えしました。
次は、この制度が実際に子供の教育にどんな影響(効果)があるのか、様々意見を踏まえて検証してみましょう。
一部の人だけが対象となっていることが問題視されている
国会では「支援を受けられるのは低所得世帯の学生のみである」ことが、議論されています。
「すべての学生が希望する大学を選べる機会を!高すぎる授業料を引き下げます」との考え方を持った政党がこの制度を問題視しているからです。
また、教育費用が年々高くなってきている事実や、日本の教育費の公的負担割合が非常に低いことも指摘しています。
低所得世帯が対象となるこの制度は、現実を見据えたとき一部の家庭にとってはよい制度でしょう。
しかし、ほんのわずかの差で低所得世帯と認定されない家庭の学生にとっては苦しい現状が続くのも事実です
教育費用に税金が投入、財政に不安あり
「高等教育の主な担い手である大学のすべてが、公費で入学金や授業料を免除すべき公共財としての価値を持つのか」と、この制度の議論が始まったころの日経新聞の記事。
つまり、公費を投入することで、学力の低下、国際的大学の質の低下を問題視しているんです。
また財源についても不安視していて、長期的に支援できるかどうかの懸念も伝えています。
国際的な大学評価として東京大学の順位が下がったことがニュースで報じられましたし、大学を卒業したものの学びを活かした就職ができていない学生も多いのも事実です。
さらに財源については税金でまかなわれているので、税収が減ってきている現状でどこまでこの制度が続くのかは、現実問題として難しい課題ではあります。
教育費以外でも必要経費はある
全国大学生活協同組合連合会が実施している学生の生活実態調査では、学費以外の費用についてデータを出しています。
7年連続でアルバイト収入が増加していること、教養娯楽費や食費も増加傾向にあることが数字で表されていました。
教育を受けるには、入学費用や授業料が必要ですが、その前に本人たちの生活を基盤として考えることが重要です。
国の制度として、その点まではガバーできていないことは認識しておく必要はありますね。
大学の無償化でも学資金の準備は必要不可欠
検証の結果、制度は動き出すにしても、これからいろんな問題や新しい議論が出てくることは間違いありません。
国がすべての子供や学生の教育費用を100%支援してくれるまでは、まだまだ時間がかかることでしょう。
このことから、国を頼らず各家庭で学資金を準備することがこれからも重要だということが言えます。
保険などで貯蓄 各家庭で学資金の準備を!
早い段階からの貯蓄をおススメします。
銀行での積立もよいですが、やはり今は金利が低いので貯蓄型保険の利用がおススメです。
最近では返戻率の高いものも出ていますし、保険料支払い期間が短いものもあります。
どの段階でどれだけの費用がいるのかを計算し、それに合わせたタイミングで保険金が受取れる商品をチョイスすれば、子供のためにそのお金を有効活用することができます。
さて、2020年、高等教育の就学支援新制度が始まりました。
すでに大学・短大・高専・専門学校に在籍している低所得世帯の学生たちは、この制度を積極的に利用しましょう。
支援してもらえる額は、家庭状況によって異なりますが、金銭的な負担が軽減されれば、生活基盤の安定につながるはずです。
土台を安定させ、しっかり学び、収入を得られる良い就職を目指しましょう。
子供がまだ小さく、これから教育費が必要となるご家庭は、早めの貯蓄対策を始めてください。
今回お伝えしました情報で、わが子への教育の在り方、教育費用の蓄えの必要性を考えるきっかけになれば幸いです。