学資保険の払込期間って何?
学資保険の払込期間とは
学資保険の加入を考えるとき、保険金額をいくらにするかについてはどのご家庭でもかなり真剣に検討されます。
しかし保険料払込期間についてはあまり検討せずに申し込んでおられるのではないでしょうか。
あるいは、払込期間って何?という方もおられるかもしれません。
学資保険の保険料を支払い続ける期間のことを、払込期間というのですが、多くの方が満期まで毎月同額の保険料を口座引き落としで支払い続けるプランで、学資保険を組んでおられるようです。
児童手当は1万から1.5万円で、毎月の保険料も1万から1.5万円というご家庭が多いため、児童手当が振り込まれる口座を学資保険の引き落とし口座にしておけば、ほったらかしでも毎月確実に学資が貯まっていく仕組みができあがります。
学資保険の払込期間は一律ではない
ほとんどの場合、学資保険の目的は教育費の負担のピークとなる大学入学のための資金準備となっています。
そのため学資保険の多くは、18歳満期となっているようです。
そして、よくあるプランは保険料の支払い期間も満期までとなっています。
このケースで1歳の誕生日に18歳満期の学資保険に加入した場合だと、保険料の払込期間は17年間となります。
ところが学資保険によっては、加入から満期までの期間より払込期間のほうが短くなっているプランもあるのです。
たとえば保険料の支払いを10歳や15歳で終えてしまうような学資保険などもあります。
学資保険の払込期間は選べる!
払済年齢から選べるプラン
学資保険には「15歳払済」「18歳払済」というように、保険料を払い終える年齢によって払込期間が決められている商品があります。
たとえば「15歳払済」の学資保険は、教育費の負担が軽い義務教育の期間に保険料を払い終えてしまえるように設計された商品です。
特にお子さんが複数人おられるご家庭では、後になるほど教育費が重なって負担が重くなる傾向があります。
よくあるパターンでは、第一子の大学入学と第二子の高校入学が重なってしまうというケースで、このような場合でも第一子の学資保険を15歳払済にしておけば、費用の負担を分散することができます。
このように長期的な視野に基づいた計画的な資金準備を行えば、教育費が増大しがちな時期をうまく乗り切れるのです。
払込期間の種類が多いプラン
また、払込期間を5年・10年・15年というように、ご家庭の事情に合わせて選択できるタイプのものも販売されています。
満期時期が同じ学資保険で、払込期間が異なるプランを選択できるという仕組みです。
払込期間を選択できる自由度については、学資保険を販売している会社によって異なります。
なお、学資保険に加入できる契約者の年齢には上限がありますが、払込期間が短いプランでは上限が引き上げられているため、希望すれば祖父母が孫の学資保険の契約者になることも可能となっています。
学資保険の払込期間は変更できる?
結論から言えば、いったん加入した学資保険の払込期間を変更することは原則としてできません。
けれども保険料の残り全部または一部を一括して払込む「前納」なら、対応してもらえるケースが多いようです。
満期まで毎月保険料を払い込むプランで契約した学資保険であっても、満期を待たずに残りの保険料をまとめて前納してしまえば、払込期間が短いプランを選択した場合に近い経済効果が期待できます。
どうしても新しい内容で学資保険を契約したい場合は、これまでの学資保険を解約するのではなく、払い済みや減額保険を検討してください。
元本割れなどのデメリットを最小限に抑えることができます。
学資保険の払込期間と返戻率の関係
学資保険の返戻率を決める要因
学資保険のお得さを示す指標としてよく持ち出されるものに「返戻率」があります。
返戻率は受け取れる満期金やお祝い金の総合計に対して、支払った保険料の総額が占めるパーセンテージを示すものです。
返戻率は、学資保険を販売している保険会社の運用実績や、学資保険につける特約によって変わってきます。
学資保険は積立貯金を同じ感覚で利用できる商品ですが、れっきとした保険商品です。
したがってご家庭のニーズに合わせて、お子さんの怪我や病気への備えだけでなく、損害保険や育英年金などの要素を特約としてつけることができます。
これらの特約には別途保険料が必要となるのですが、この部分の保険料は掛け捨てとなるため、特約を多くつけると保険料のなかの満期金やお祝い金として充てられる部分が減っていきます。
結果的に受け取れる満期金やお祝い金の額も減ってしまい、返戻率も下がってしまうことになるのです。
返戻率を重視したい場合には特約を一切つけないプランを選択したうえで、保険料の払込期間についても検討しましょう。
学資保険の払込期間で返戻率が変わる
学資保険の払込期間によって返戻率が変わる理由を説明しましょう。
保険会社は、支払われた保険料をまとめて運用することでお金を増やしています。
とはいえ、預かったお金を全て運用に回すことはできず、解約返戻金や保険金の請求などに応じるための必要なお金を常備しておかなければなりません。
学資保険の保険料も一般的な資産運用と同様に、運用できる金額が多くて期間が長いほどお金を大きく増やすことができるため、学資保険の払込期間によって返戻率が変わってくるのです。
たとえば18歳満期で満期金200万円の学資保険の場合、10歳までに払い込んでしまえば、残りの8年間じっくりと運用に充てることができます。
一方、18年間毎月保険料を支払っていく場合には、長期運用に回せる金額が少なくなるのです。
返戻率が変われば保険料総額も変わる
資産運用の際、必要となる元本は運用条件が良ければ少額ですむため、運用期間を長くできるなら元本を抑えることができるのです。
たとえば学資保険で満期金200万円を用意したいなら、運用期間が長くできる場合は保険料の総額を抑えることができるため、満期金に対する支払い保険料を安くできます。
つまり返戻率と保険料総額は表裏一体の関係にあり、返戻率が高い学資保険は低いものより支払保険料の総額が少なくてすむことを逆から見ると、支払い保険料の総額が少なければ、返戻率は高くなるというわけです。
そして支払保険料を少なすくするための方法の一つが、保険料の払込期間を短くすることなのです。
払込期間によってどのくらいお得さが変わってくるかについては、このあと解説します。
学資保険の払込期間は短いほどお得
それでは、具体的に学資保険の払込期間によって保険料はどのように違ってくるのかをみていきます。
契約者30歳・被保険者0歳で、17歳から21歳までに合計210万円を受け取るプラン(「ニッセイ学資保険・子ども祝金なし型」で試算)に加入した学資保険を例に取り、払込期間が5年・10年・17年のケースを比較した表を作成してみました。
保険料払込期間 | 5年 | 10年 | 17年 |
月払保険料 | 32,711円 | 16,667円 | 10,136円 |
払込保険料総額 | 1,962,660円 | 2,000,040円 | 2,067,744円 |
返戻率 | 約106.9% | 約104.9% | 約101.5% |
受取保険料と払込保険料との差額 | 137,340円 | 99,960円 | 32,256円 |
現在、メガバンクに定期預金として100万円を1年間預けたときの年利は0.01%となっています。
学資保険を払込期間17年で契約した場合、返戻率だけを見れば定期預金の年利とほとんど変わらないように見えますが、契約者の万一に対する備えもあることを考えると、学資保険はまだまだ有利な商品といえます。
さらに、保険料の払込期間を5年あるいは10年に圧縮すると、返戻率はかなり高くなります。
以前に比べて学資保険の旨味は少なくなったといわれており、実際のところ満期まで毎月保険料を支払うプランでは、17年間でたった32,256円しか増えません。
けれども5年、10年と短い払込期間に設定すれば、返戻率をかなり高くできるのがわかります。
支払い方法でも学資保険のお得さが変わる
学資保険の払込期間は短いほどお得になることを仕組みと実際の数値から解説してきましたが、ここからはさらに学資保険をお得にパワーアップさせる方法について解説していきます。
学資保険のお得さは、保険会社が預かった保険料の運用を有利に行えるかどうかに掛かっているということをすでにご紹介しました。
つまり運用を有利にできる方法が分かれば、学資保険をもっとお得な商品にすることができるというわけです。
保険会社が運用できる金額が多くなれば、それだけ有利な条件で運用できることになります。
そこで支払期間を短くしたうえで、さらに毎月払いでなく年払いで保険料を支払えば、もっと返戻率を高くすることができるようになるのです。
以下の表は、先にご紹介した「ニッセイ学資保険・子ども祝金なし型」の契約者30歳・被保険者0歳で、17歳から21歳までに合計210万円を受け取るプランの保険料を、年払いにした場合の試算です。
支払期間 | 毎月払い | 年払い | |
5年 | 保険料 | 32,711円 | 391,020円 |
払込保険料総額 | 1,962,660円 | 1,955,100円 | |
返戻率 | 約106.9% | 約107.4% | |
10年 | 保険料 | 16,667円 | 199,227円 |
払込保険料総額 | 2,000,040円 | 1,992,270円 | |
返戻率 | 約104.9% | 約105.4% | |
17年 | 保険料 | 10,136円 | 121,156円 |
払込保険料総額 | 2,067,744円 | 2,059,652円 | |
返戻率 | 約101.5% | 101.9% |
年払いにすると、さらにお得になることがよく分かります。
とはいえ、年払いは厳しい…と考える方もおられるでしょう。
けれども厳しいのは初回の支払いだけで、あとは別口座に月額の保険料を取り除けておけば、次の支払いは楽に行えるはずです。
さらに払込期間が5年のものなら1年で1,512円の「お釣り」が残り、100,000円を年利1.5%以上で運用したことと同じ効果が得られます。
こう考えると、頑張ってみようと思えるのではないでしょうか。
見誤ると大変!満期金の受取時期
学資保険の返戻率は、満期金などを受け取る時期や方法によっても違ってきます。
ここまで記事を読まれた方なら、できるだけ満期金を遅く受け取ったほうがよりお得になるということにお気付きでしょう。
けれども満期金の受取時期は、返戻率だけを考えて決めてはいけないのです。
お祝い金を受け取らないほうがお得だけど
学資保険で返戻率を高くする方法としては、満期金やお祝い金の受取時期を遅らせることも考えられます。
運用期間が長くなればなるほどお金が大きく増えるため、17歳の満期以前にお祝い金を受け取ると、返戻率は下がってしまうのです。
満期までにお祝い金を受け取った場合と受け取らなかった場合では、どのくらい返戻率に違いがあるのかを、ソニー生命の「学資金準備スクエア」からみてみましょう。
契約者30歳・被保険者0歳・保険料払込期間10年で、17歳のときに200万円を一括で受け取るケースと、進学学資金(いわゆるお祝い金)として11歳と14歳のときにそれぞれ36万円を、受取満期学資金として17歳で120万円を受け取るケースを紹介します。
進学学資金あり | 進学学資金なし | |
受取総額 | 192万円 | 200万円 |
月払保険料 | 15,960円 | 16,200円 |
払込保険料総額 | 1,915.200円 | 1,946,400円 |
返戻率 | 約100.2% | 約102.7% |
受取総額が同額でないため少し分かりづらくなっていますが、返戻率をみると一目瞭然です。
進学学資金を受け取るということは運用資金の一部を取り崩していることなので、満期までの期間に運用できる資金が減ってしまいます。
そのため、満期まで全額据え置く「進学学資金なし」のプランより運用利回りが低くなってしまうのです。
けれど、学資保険以外に学資の備えがないというケースや、お子さんの進学時期に出費がかさんでしまうような場合、お祝い金がなければやりくりが厳しくなってしまうことも考えられます。
万一やりくりがうまくいかずに金利が高いカードローンを利用することになれば本末転倒となるため、必ずしも満期まで全額据え置くプランがよいとはいえないのです。
お祝い金を受け取るプランにしておいても、お祝い金を使わずにすめば預貯金にしておいたり、学資保険の保険料支払いに充てたりすることもできるので、無理のないプランを選択していただければと思います。
21歳まで分割で受け取ったほうがお得だけど
同様に、17歳の満期時に一括で満期金を受け取るより、21歳まで分割で受け取るほうが返戻率を高くすることができます。
ソニー生命の「学資金準備スクエア」からみてみましょう。
契約者30歳・被保険者0歳・保険料払込期間10年で、17歳のときに200万円を一括で受け取るケースと、17歳から22歳まで5回に分けて40万円ずつ受け取るケースを紹介します。
17歳で一括受取 | 22歳まで分割で受取 | |
受取総額 | 200万円 | 200万円 |
月払保険料 | 16,220円 | 15,788円 |
払込保険料総額 | 1,946,400円 | 1,894,560円 |
返戻率 | 約102.7% | 約105.5% |
17歳で一括して受け取るより、22歳まで分割で受け取ったほうが51,840円もお得になります。
元本保証でここまで高い利回りの金融商品はまずないため、かなり魅力的に見えるはずです。
けれども教育費が最も必要となるのは、大学入学時期です。
大学入学後も引き続き教育費は必要となりますが、お子さんがアルバイトをしたり奨学金を利用したりすることで対応できます。
大学の入学に必要な資金を別途用意できるなら問題ありませんが、そうでない場合には、17歳のときに一括で満期金を受け取るプランにしておかれることをおすすめします。
学資保険を短期で払ってしまうことのデメリット
ここまで、学資保険の保険料を短期間に支払ってしまうことのメリットを紹介しました。
とはいえ、保険料を短期間に支払い終えてしまうことにデメリットはないのでしょうか。
ここからは、それぞれ考えられるデメリットについて詳しく検証していきましょう。
保険料の負担が大きくなる
学資保険の保険料を短期間に支払ってしまうことで、支払総額は少なくなります。
けれども、支払期間が短くなるために、毎月あるいは毎年の支払額は大きくなってしまうのです。
先に紹介した「ニッセイ学資保険・子ども祝金なし型」の場合だと、毎月の支払保険料は支払期間が17年なら10,136円ですが、5年では32,711円と3倍以上の金額が必要となります。
お子さんが5歳までの期間は比較的教育費の負担が少ない時期にあたり、この時期に頑張って全額支払ってしまうことができれば、後々楽になることは確実です。
複数のお子さんを希望されている場合なら学資保険に個別に加入するのではなく、長子に一本化して短期間で保険料を支払い終えるという方法も考えられます。
とはいえ、学資保険は中途解約すると確実に損をする商品なので、最後まで支払い続けられる保険料にしておくことが大切です。
「保険料払込免除特約」の有効期間が短くなる
他の金融商品にはない学資保険のメリットとして、「保険料払込免除特約」があります。
「保険料払込免除特約」は、契約者が死亡もしくは重度障害状態になった場合、それ以後の保険料が免除されるという特約です。
たとえばお子さんが7歳のときに契約者が亡くなられた場合、保険料の支払期間が17年間であれば残り10年間の保険料は免除されたうえ、満期保険金やお祝い金は当初の設定どおりに満額受け取ることができます。
しかし支払期間が5年であればすでに保険料は支払い終えているため、「保険料払込免除特約」の恩恵に預かることはできません。
また、契約者に万一のことが合ったとき保険料を年払いにしている場合は、保険料が免除されるのは次回の支払いからとなります。
つまり、最長で11ヶ月後から免除を受けられることになるということです。
なお、払込期間を5年にするのであればいっそのこと「保険料払込免除特約」を外してしまえば、もっと返戻率を高くすることができます。
保険料の控除を受けられる期間も短くなる
学資保険の払込期間を短くした場合に生じるデメリットとして、保険料控除を受けられる期間が短くなってしまうことも挙げられます。
学資保険の年間払込保険料が8万円以上の場合、年末調整や確定申告で所得税では4万円、住民税では2.8万円の控除を受けられるのです。
保険料の払込期間中でなければ、この控除は受けられないのです。
たとえば保険料の払込期間が5年であれば、控除を受けられる期間も5年となります。
さらに控除額には上限が設けられているのですが、満期金が200万円の学資保険を払込期間5年で契約した場合、年間の支払い保険料は40万円近くになるため、大半の保険料は控除対象外となってしまうのです。
とはいえ、保険料の控除では、学資保険と一般の生命保険の保険料は「一般生命保険料控除」の対象となるため同一枠として計算されます。
たとえば契約者(お子さんの父親もしくは母親)が生命保険に加入している場合、それだけで年間の払込保険料は8万円を越えてしまっていることが多いでしょう。
したがって、学資保険の保険料控除への貢献度は期待したほどのものではないケースが多いようです。
また、保険料の控除額は所得税で4万円、住民税で2.8万円となっていますが、この金額をそのまま受け取ることはできません。
実際に受け取れる額は所得税率が10%(課税所得なら500万円が目安)であれば、所得税と住民税を合わせても6,800円です。
実際に「ニッセイ学資保険・子ども祝金なし型」の契約者30歳・被保険者0歳で、17歳から21歳までに合計210万円を受け取るプランで計算してみたところ、以下のようになりました。
17年間保険料控除を受けて戻ってくる税金:6,800円×17年=115,600円
保険料の支払期間を5年にした場合に安くなる支払保険料:
2,067,744円-1,962,660円=105,084円(毎月払い)
2,059,652円-1,955,100円=104,552円(年払い)
ここに5年間に受けられる保険料控除で戻ってくる税金(6,800円×5年=34,000円)を加えると、毎月払いで139,084円、年払いで138,552円となります。
同じ「ニッセイ学資保険・子ども祝金なし型」で10年払いを選択した場合もみてみましょう。
保険料の支払期間を10年にした場合に安くなる支払保険料:
2,067,744円-2,000,040円=67,704円(毎月払い)
2,059,652円-1,992,270円=67,382(年払い)
ここに10年間に受けられる保険料控除で戻ってくる税金(6,800円×10年=68,000円)を加えると、毎月払いで135,704円、135,382年払いで138,552円となります。
このように、学資保険の払込期間を17年にした場合に受けられる控除額と、払込期間を5年もしくは10年にした場合に安くなる保険料を試算してみてると、保険料の支払期間を短くしたほうがやや有利となります。
つまり、保険料の控除にこだわる必要性はさほどないという結論になりますが、父親と母親のそれぞれを契約者とした学資保険を契約すれば、保険料控除のメリットを大きくできるケースもあります。
学資保険払込期間についてのまとめ
学資保険の払込期間を短縮することのメリットは、返戻率を高くするだけではないのです。
教育費の負担を分散できたり、契約者の年齢が高くても学資保険に加入できたりする点も見逃せません。
払込期間を短縮することで、保険料の負担が大きくなったり、保険料控除を受けられなくなったりするというデメリットも考えられますが、トータルで考えるとメリットのほうが大きいといえます。
学資保険の払込期間を短くするうえで考えるべきことは、保険料が支払えるかどうかです。
これさえクリアできれば、保険料の払込期間の短縮は確実に返戻率を高くできる方法といえます。