孫の学資保険に祖父母は加入できる?
契約者になれるのは誰?
学資保険は、子供の学資を確保するための保険です。
保険の契約をする際には、契約者・被保険者・保険金受取人を指定しなくてはなりません。
まずはそれぞれの詳細について確認しましょう。
- 契約者:保険の契約を行い、保険料を負担する人
- 被保険者:保険の対象となる人
- 保険金受取人:保険金を受け取る人
学資保険の場合、被保険者はお子さんとなります。
契約者はだれでもなれるわけではなく、「被保険者の父や母、三親等内の親族」または「被保険者を扶養する人」と定められています。
したがって、お子さんにとって二親等にあたる祖父母は、原則として契約者になることができます。
祖父母の加入には条件が付く
祖父母はお子さんの三親等内の親族にあたりますが、学資保険の契約者になるためには、ほかにも条件があります。
それは契約者の「健康状態」と「年齢」についてです。
健康状態によっては学資保険に加入できない
学資保険には基本的に「保険料払込免除特約」が付いています。
「保険料払込免除特約」とは、保険料払込期間中に契約者が万一「死亡または所定の高度障害状態」となった場合、それ以降の保険料は免除されて、お祝い金や満期保険金も受け取れるという制度です。
したがって契約者の健康状態によっては、学資保険に加入できないこともあります。
しかし、「保険料払込免除特約」を付けないことで契約者の健康状態に左右されずに加入できる学資保険もあるため、諦めずに保険会社まで問い合わせてみてください。
契約者の年齢にも制限がある
保険料払込免除特約が付いている学資保険では、健康状態に加え年齢についても重視されます。
保険料払込免除特約により、契約者が死亡または所定の高度障害状態に該当した場合、保険料の支払いが免除されるためです。
一般的に契約者の年齢が高くなるほど、契約者が死亡または所定の高度障害状態に該当するリスクも高くなります。
したがって学資保険に加入できる契約者の年齢は、おおむね65~70歳(保険満期時)に制限されているのです。
さらに、男性より女性の方が年齢の上限が高くなっています。
これは、男性より女性の方が長生きする傾向が高いためです。
▶学資保険は何歳まで入れるの?年齢が高くなっても加入できるの?
祖父母が学資保険に加入する場合に注意すべきこと
先の項で紹介した健康状態や年齢以外にも、祖父母が学資保険に加入する場合に注意すべきことがあるので紹介します。
親権者の同意が必要
祖父母が孫の学資保険の契約者になる場合には、親権者の同意が必要になります。
保険料を祖父母自身が支払うにもかかわらず親権者の同意が必要となる理由は、被保険者が未成年であるためです。
学資保険の契約書には、親権者の同意を確認するための親権者(もしくは後見人)の署名欄があり、同意を得られなければ加入できません。
孫と同居していなければ加入できないことも
親権者の同意を得られても、学資保険に加入できない場合があります。
保険会社によっては、被保険者である孫と同居・扶養している祖父母でなければ、加入を認めないところがあるからです。
この場合、住民票や保険会社が指定する書類などを提出しなければなりません。
もちろん、別居で扶養していない孫でもOKの学資保険もありますが、加入できる学資保険が制限されてしまうということを認識しておく必要があります。
「保険料払込免除特約」が付けられないことが多い
先の項で解説した『祖父母の加入には条件が付く』にあるように、祖父母の健康状態や年齢によっては、「保険料払込免除特約」が付けられないことがよくあります。
この特約を付けなければ、万一祖父母が高度障害状態になっても保険料の支払いは免除されません。
学資保険が貯蓄より優れている点は、この「保険料払込免除特約」に負うところが大きく、特約をつけられないなら学資保険のメリットはかなり小さくなってしまうのです。
なお、両親が死亡していて祖父母が親権者となっている場合には、保険料払込免除特約の付帯が認められる場合もあります。
保険期間中に契約者が死亡したら
学資保険に加入している途中で契約者が死亡してしまった場合でも、一般的には「保険料払込免除特約」によって契約はそのままで保険料の支払いが免除されます。
しかし「保険料払込免除特約」をつけずに加入した学資保険の場合は、契約を継続するか解約するのかを選択することになるのです。
つまり、契約者を祖父母から両親に名義変更するか、解約して返戻金を受け取るかとなります。
学資保険の中途解約はほとんどの場合、大幅な元本割れとなってしまいますが、契約を継続したいなら、新たな契約者となった両親が保険料を支払い続けなければなりません。
いずれの場合も、解約返戻金相当額を新たな契約者が相続することなるため、相続税の課税対象となってしまいます。
この場合、死亡保険金とは異なりみなし相続財産とならないため、生命保険の非課税枠は適用ない点にも注意が必要です。
祖父母が学資保険に加入するデメリットは?
保険料が高額に
学資保険にかぎらず、保険は年齢が高くなるほど保険料も高くなります。
さらに保険満了時の年齢がおおむね65~70歳に制限されるため、どうしても保険加入期間が短くなってしまうのです。
保険は早く加入して長く保険料を支払い続けることで、毎月の保険料を安く抑えることができるのですが、祖父母が加入する学資保険の場合は全く逆になり、遅く加入して短期間に保険料を払い終えなければなりません。
したがって、保険料は支払総額・毎月の支払額ともに高額になってしまうことが避けられないのです。
贈与税が多く掛かる
学資保険の祝い金や満期金の受け取りの際に掛かる税金は、以下の表で示したように契約者と受取人との組み合わせによって違ってきます。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
祖父母 | 孫 | 祖父母 | 所得税(一時所得または雑所得) |
両親 | 贈与税 | ||
孫 |
受取人を祖父母以外にした場合には贈与税が掛かりますが、祖父母自身にした場合には所得税が掛かります。
所得税は支払った金額と受け取った金額の差額に掛けられるため、贈与税より所得税のほうが税額を少なくなるため、受取人を祖父母にしておくと得するように感じられるかもしれません。
しかし、学資保険で受け取るお金は孫の学資のために使われるため、孫に贈与されるものです。
つまり、祖父母が契約した学資保険で受け取るお金は、どうやっても贈与税から逃れることはできません。
贈与税の額は以下の式から計算することができます。
[課税総額-基礎控除額(110万円)]×税率-控除額
税率と控除額は以下のとおりです。
控除後の課税対象額 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超~300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超~400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超~600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超~1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超~ | 50% | 225万円 |
たとえば、受け取り保険料が300万円の学資保険だと贈与税額は、
(300万円-110万円)×10%-0円=19万円
となるのです。
なお、契約者が両親であれば、扶養者している子供の学資となるため贈与税ではなく所得税が掛かります。
保険金を一括で受け取る場合は一時所得扱いとなるため、学資保険でお金が50万円以上増えた場合に課税対象となります。
つまり、学資保険の満期保険料やお祝い金などの総計から支払った保険料を引いたから50万円を控除した残りが一時所得となり、その半分を所得税として収めることになるのです。
たとえば受け取り保険料が300万円で返戻率が105%の学資保険に両親が加入したケースでは、以下のような計算となり、所得税は1円も掛かりません。
[(300万円-300万円/1.05)-50万円]/2<0円
このように同じ300万円の学資保険に加入しても、課せられる税金の種類によって、満期金などに掛かる税額はとても大きな差が生じてしまうので、ご注意ください。
もっと賢く学資保険を援助する方法
保険料を祖父母が支払う方法がベスト
ここまで祖父母が孫の学資保険に加入した場合について、詳細にみてきましたが、結局のところ祖父母が孫の学資保険に加入することは、メリットよりデメリットのほうが多いようです。
孫のために学資保険への加入を考えるなら、祖父母自身が契約者となるのではなく、孫の両親を契約者にした学資保険の保険料を負担してあげることがベストです。
この場合、1月1日から12月31日までの1年間に、1人に対して110万円以内の贈与であれば贈与税が掛かりません。
つまり、両親それぞれ(孫の父親と母親)に110万円ずつ渡してもOKということです。
これなら複数の孫に対する学資保険や、200万円程度の学資保険の保険料を無税で負担してあげることも可能となります。
さらに、両親が支払った学資保険の保険料は所得税控除の対象となるため、多くの場合に祖父母が学資保険に加入するより節税効果が大きくなる点もメリットです。
ただし、年間110万円以下の贈与でも、孫の誕生日に毎年100万円というように、同日同額の贈与であれば「連年贈与(まとまったお金を分割して贈与した)」とみなされ、課税対象とされることもあるので注意が必要です。
どうしても学資保険を契約したいなら
どうしても祖父母自身が契約した学資保険を孫にプレゼントしたいという場合、満期保険料が110万円以下となる学資保険に加入することで、贈与税を免れることができます。
さらにもっと多額の学資保険を希望される場合には、満期やお祝い金の受け取り時期をずらすことで対応できるのです。
例えば、満期金が300万円の学資保険に一口加入するのではなく、100万円のものを保険金の受け取り時期をずらして3口加入するという方法です。
なお年間110万円の制限は、祖父母が贈与することになる保険金の総額ではなく、孫ひとりあたりの保険金額に対してです。
つまり、複数の孫への学資保険での保険金受取り時期が重なって、年間総額が110万円以上になっても、孫一人についての保険金の受取額が年間110万円以下であればOKですので、心配にはおよびません。
孫への学資援助は他にも方法がある
直接現金や物をあげれば簡単
前述したとおり、学資保険の大きなメリットは「保険料払込免除特約」と、支払った保険料に対する受け取り保険金総額の割合である返戻率返戻率の高さにあります。
祖父母が契約者となる場合「保険料払込免除特約」は期待できないことに加え、支払う保険料が高くなりがちなため返戻率も低くならざるを得ません。
このように、学資保険に祖父母が加入するメリットはほとんどありませんが、もっとよい学資援助の方法はいくらでもあります。
たとえば、贈与税を回避しながら直接お金をあげたり、文房具などを買ってあげたりするという方法です。
このとき注意したいことは、孫が年間に受ける贈与の総額です。
もし孫の入学祝いに110万円以下のプレゼントをあげた場合、他のひとからもお金をもらってしまうと贈与税が発生します。
よくあるのは自分の子供の配偶者の親、つまり「向こうの祖父母」からもお金が贈られるケースです。
この場合、どちらかが年内に贈与することで贈与税を回避できることが多いので、検討されることをおすすめします。
1,500万円まで非課税で学資援助できる方法も
2019年3月31日までの時限措置となりますが、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」という制度を使えば、1,500万円まで非課税で孫に学資の援助ができます。
手続きの方法は、まず金融機関に専用の口座を開き、税務署に非課税申告書を提出したうえで、孫1人当たり1,500万円までの資金を入金します。
その後、入学金や授業料などを口座から引き出すのです。
孫が30歳になるまで利用できますが、資金の引き出しには領収書が必要であることや、使い道に制限があることなどがデメリットです。
まとめ
孫のための学資保険に祖父母が加入するには、さまざまな条件をクリアしたうえで、高い保険料や税金を支払わなければなりません。
したがって、祖父母が学資保険に加入することにメリットはなく、もっと他の方法を選択されることをおすすめします。
また、孫への教育援助はお金だけではありません。
孫の両親である親への子育て支援や、孫とのふれあいそのものも大きな教育援助となります。
孫にとって宝物になるような、おじいちゃん・おばあちゃんとの思い出を作ってあげられたら最高ですね。