学資保険の加入率の変化
学資保険は昔より人気が低迷し、加入率が下がったと言われています。
その原因と言われているのが返戻率です。
学資保険の加入率が下がった理由と返戻率の変化を解説します。
学資保険の加入率が80%を超えた時代があった
昔は子供の貯蓄といえば「学資保険」でした。
教育資金の準備だけではなく、銀行預金の代わりに利用する方もいました。
その理由が高い返戻率。
多くの方が学資保険を利用し、加入率が80%を超えた時代もあったのです。
今では考えられませんが、学資保険に一括で加入することで、返戻率が優遇されるプランの場合、0歳に支払った180万円が、満期18歳には300万円になることもありました。
18年間の運用で、120万円も増やすことができたのです。
この返戻率でしたら、学資保険の加入率が80%を超える理由がわかりますね。
学資保険の加入率が減ってきた理由
加入率が下がった原因は、やはり返戻率(利息)の減少が大きく関係しています。
1990年から1994年は、銀行の利息や学資保険の返戻率は高く、国債や県債など銀行が扱う金融商品の利息は4%を超えていました。
それが少しずつ下がり、日銀がマイナス金利を発表した2016年には、10年ものの国債の利息が-0.030%にまで下がりました。
10年間、銀行にお金を預けても満期にマイナス・・・これでは預金する意味がなくなります。
社会情勢と共に、国内で扱う預金や保険など金融商品の利息が下がり、加入率が減少することになりました。
【2019年度版】教育資金の貯蓄方法と加入率を紹介
2019年にソニー生命が発表した、「子供の教育資金に関する調査」の結果を見ていきます。
※ソニー生命調べ2019年発表(調査期間2019年1月12日~1月16日の5日間)
2019年の教育資金に関する調査では、未就学の子供を持つ70.5%の方が、お子さまの教育資金が準備できるのか?不安を感じていることがわかりました。
不安を感じる理由には、
- 将来的に教育資金がどれくらい必要になるのかわからない
- 収入の維持や増加に自信がない
- 消費税が10%へ増税されるため
などが挙げられました。社会情勢やお子さまの進路で変わっていく教育資金。
小さなお子さまを持つご家庭では、今の段階で、将来に必要な金額を予測するのは難しいことです。
しかし大学生等の親になると、不安が35.7%と半分に減少しました。
大学生の親ですと、進路が決まればある程度の教育資金が計算できます。
何よりお子さまが小さな頃から貯蓄した教育資金が強みとなり、不安の減少へと繋がっているのです。
ソニー生命調べ学資保険の加入率
料率改定の影響で下がった加入率
2019年に発表した「ソニー生命調べ」では、高校生までの親(748名)を対象にした調査で、学資保険の加入率は50.8%でした。
高校生までの子供を持つ親の半分が、大学までの貯蓄に「学資保険」を選んでいるということになります。
ただこの数字は昨年よりは増えましたが、以前に比べると減っているのが現状です。

学資保険の加入率の変化
※ソニー生命の調べより
学資保険の加入率は、2016年まで増加傾向にありましたし、教育資金を準備する方法として銀行預金よりも学資保険を選んでいる人の方が多かったのですが、2017年から減少傾向になり、2018年の学資保険の加入率は46.3%で、過去5年間の中で一度だけ学資保険の加入率が50%を下回る結果となりました。
これは2017年の4月に実施した料率改定により、保険会社はすべての商品の保険料を約2割値上げしました。
この保険料の値上げが、学資保険離れに繋がりました。
しかし、銀行に預金しても利息が付かない状況は変わらず、保険料が上がっても他のあらゆる面で安定した学資保険にまだ加入する価値はあるため、46.3%だった加入率が翌年には50.8%へ上昇しました。
ただ、2017年までは銀行預金より学資保険で準備する人の方が多かったのですが、2018年から銀行預金の加入率は多くなり、2014年に発表した調査では、49.6%に対し、2019年は54.3%と学資保険よりも利用する人が多くなっています。
さて、上図は、高校生以下の子どもの親に聞いたこどもを大学等へ進学させるための教育資金をを学資保険で準備している人の割合をグラフにしましたが、ソニー生命では、大学生等の親に聞いた、大学等への進学のための教育資金を学資保険で準備した人の割合も調べています。
これからの教育資金を準備している人の割合と、実際に準備した人の割合の違いですね。

学資保険利用の割合
この数値を見ると、実際にも大学の教育資金の準備として質問に答えた半数の人が学資保険を利用しているのがわかりますね。
2017年だけの落ち込みがすごく目立ちます。
学資保険のメリット
人気が低迷したと言われる学資保険ですが、過去5年間のデータから、加入率には「大幅な変化」がないことがわかりました。
マイナス金利の影響で返戻率が下がっても、約50%の方が加入する学資保険には、選ばれる理由があるはずです。
学資保険のメリットから、加入率との関係を考えていきましょう。
貯蓄に保障が付く
学資保険には銀行預金にはない多くのメリットがあります。
その1つが「保障」です。学資保険は、貯蓄に保障がプラスされた保険になります。
この保障は、銀行預金には付かないものです。
学資保険は加入者に万一があった時、保険料が免除されます。
縁起でもない話ですが、契約期間中に加入者が亡くなってしまった。というケースもあります。
収入面の激変から進学に必要な教育資金が用意できなくなり、大学を諦めざるを得ない、ということが起こるかも知れません。
そのような状況になっても、学資保険の保障がお子さまの未来を守り、大学に進学させることができるのです。
生命保険と同じように、学資保険につく保障は「お守り」となります。
返戻率が高いプランがある
確かに昔に比べると学資保険の返戻率は下がりました。
しかし学資保険にもまだ、返戻率が100%を超える人気のプランがあります。
明治安田生命の「つみたて学資」は、一括で払い込みをした場合、返戻率が「約109.0%」になります。
※掲載の保険料などは平成30年5月2日時点の(計算基準)です。
ソニー生命の学資保険「学資保険Ⅲ型」は、月払い・10歳払いまでの込みで、返戻率が「約105.5%」となります。
お子さまが10歳までに払い込みが終わるため、将来に備えた「教育資金」が早めに準備できます。
※掲載の保険料などは2020年3月1日時点の(計算基準)です。
現在銀行の普通預金の利息は、ほとんどないに等しいものです。
定期預金についても、お金を預けて増やすことは期待できません。
しかし学資保険ですと、返戻率が100%を超えるプランに加入した場合、お金を増やすことが可能となります。
月々の支払いができる
銀行の定期預金や国債は、ある程度まとまった金額を預けます。
やはり一度に大金を工面するのは容易ではありません。
学資保険の保険料は、月々の支払いができるため、まとまったお金を工面する必要がありません。
また保険料は毎月、指定の金融口座から「自動引き落とし」になるため、払い忘れがなく、コツコツ積み立てることができます。
銀行預金の場合いつでも簡単に引き出せるため、急にお金が必要になった時、ついつい当てにして使ってしまう可能性があります。
学資保険は途中で解約さえしなければ、お金を増やすことができます。
そのため「今解約しては勿体ない」とブレーキがかかり、途中で貯蓄を使い込むことなく、計画的に貯めることができるのです。
月々の支払いができるため、子供手当を利用して保険料に充てることも可能になります。
学資保険を選ぶ理由
では実際学資保険に加入した方は、どのような理由で学資保険を選んだのか?みていきましょう。
例え数万円でもお金を増やしたい
やはり子供を持つ親にとって、教育資金を用意することは切実な問題です。
現在のマイナス金利の中、銀行にお金を預けることに不安を感じる方が、「例え数万円でもお金を増やすなら、学資保険の方が役に立つ」と考え選んでいます。
計画的に貯蓄ができる学資保険は、「返戻率が100%を超えるプランがある限り、利用するべき。」と必要性を感じているのです。
学資保険をお子さまの大学の進学に利用した親は、大学に合格して、いざ入学金を振り込む時「学資保険に入っていて良かった」とつくづく感じています。
株や投資などのリスクを避けたい
マイナス金利の時代だからお金は貯蓄するのではなく、株や投資で増やしたい。と考える方もいます。
しかし株や投資の勉強をして、熟知した人でも難しい世界。
一般の素人が手を出すにはリスクが大きすぎます。
学資保険でしたら返戻率に注意して、途中解約さえしなければ、お金を運用することができるのです。
リスクを負わず運用できるところが、学資保険が選ばれる理由の1つです。
子供の名義で残したい(親や祖父母の愛情)
社会情勢や返戻率が変動しても、変わらないのは親心です。
いつの時代でも子供を持つ親は、「子供に好きなことをやらせたい」「最低限の教育を受けさせたい」と思うものです。
教育資金を用意したいと願う親の愛情が、学資保険に加入する理由に繋がっています。
また、孫を思う祖父母が「孫の名義でお金を残したい」と加入するケースも多く、贈与税がかからない範囲(110万円以内)で、昔から続く学資保険を選んでいます。
加入する上で注意すること
いざ学資保険に入ろうとした時困らないように、学資保険を選ぶ上で知っておきたい注意点を紹介します。
学資保険に加入する上で注意すること
加入年齢に注意する
学資保険には、お子さまの「加入時の年齢」を設定しているプランがあります。
保険会社によって多少の差はありますが、学資保険のほとんどのプランでは、加入できるお子さまの年齢を0歳から6歳までに設定しています。
その期間を過ぎてしまった場合、学資保険に入れなくなります。学資保険を選ぶ上で、お子さまの年齢には十分注意してください。
お子さまの加入時の年齢が低いほど、満期までの運用期間が増え、返戻率がアップすることになります。
また加入時の年齢が低いほど、月々の掛け金が安くなります。
様々なメリットがある学資保険ですが、加入時のタイミングを間違えてしまうと、損をすることになります。
学資保険に加入する際は、お子さまの年齢に気を付け、計画をもって加入しましょう。
返戻率に注意する
やはり、学資保険で「貯蓄」を増やすために欠かせないのが返戻率です。
支払った保険料より、受け取る額が多くなければ意味がありません。
プラン1
返戻率が110%の学資保険に加入したとします。
保険料を総額200万円払った場合、受け取り額は下記のようになります。
200万円(保険料の総額)×1.1(返戻率:110%)=220万円
20万円多く受け取ることになりました。
プラン①は、返戻率が100%を超えるケースですが、反対に返戻率が100%を切るプランの場合はどうなるでしょう?返戻率だけを変えて計算してみます。
プラン2
返戻率が95%の学資保険に加入したとします。保険料を総額200万円払った場合、受け取り額は下記のようになります。
200万円(保険料の総額)×0.95(95%:返戻率)=190万円
支払った総額より10万円もマイナスになりました。
返戻率が違うだけでプラン①とプラン②では、受け取る額に30万円も差があります。
返戻率が100%を切るプランは、支払った保険料より受け取る額が少なくなります。
このようなプランには、なるべく加入しないようにしたいものです。
もし社会情勢が変わり、この先学資保険の返戻率が下がっても、それ以前に加入した「100%を超えるプラン」には影響がありません。
満期まで契約時の返戻率で運用されることになります。
学資保険を選ぶ上で、できるだけ「返戻率」は高い方がよい重要なポイントです。
保障を多く付けると返戻率が下がる
学資保険のメリットは貯蓄に保障が付くところです。
契約者に万一があった場合には、保険料の免除が受けられる他、契約者やお子さまの入院・手術に備えた保障を付けることができます。
しかし保障を多く付けることで貯蓄(運用)に回すお金が減り、満期に受け取る額が少なくなります。
貯蓄に回すお金が減ることで、返戻率が下がるケースもあります。
契約者が生命保険に加入している場合は、学資保険にあえて保障を付ける必要はありません。
学資保険の中に、どうしても付けたい保障がなければ、保険料は貯蓄に回し、もらえる額を増やすようにしましょう。
学資保険に加入する際は、プランに付く保障内容を必ず確認してください。
まとめ
返戻率が下がったことにより、学資保険の加入率が20年前から徐々に減っているのは事実です。
しかし学資保険にはメリットが多く、返戻率が100%を超えるプランを選べば、銀行預金よりお金を増やすことができるため、現在でも50%以上の方から選ばれています。
学資保険は拘束期間が長いため、今すぐ使わないお金の運用に適しています。
手元に置いておきたいお金は銀行へ預金、そうでないお金は学資保険に、分散して教育資金を貯蓄するのも一つの方法です。
いずれにしても経済的に行き詰ることがないように、教育資金の準備は無理をせず、できる範囲で考えてください。