学資保険とジュニアNISAの違いとは?
子どもが堅実な将来を掴むため、大学費用を蓄えておきたいと思うのが親心です。
さまざまな統計で考えられているのは、子どもが大学に進学するために約300万程度の貯蓄があればひとまず安心のようです。
着実に貯蓄していくために学資保険がありますが、最近注目されているジュニアNISAとどちらが有効なのか迷う場合も多いようです。
今回は学資保険とジュニアNISAに違いについて、メリット・デメリットを詳しく解説します。
堅実さを求めるなら学資保険がベター
子どもの教育資金の貯蓄と言えば学資保険がメジャーとなっています。
保険料を毎月支払うことで子どもの進学時期に保険料を受け取ることができます。
支払い方法は年一括払いや払い込み方法などがありますから、自身の経済力に合わせて選ぶことが可能です。
また、万が一両親が亡くなった場合は、保険料の支払いが免除された上に、進学時には予定通りの保険金を受領することが可能になっています。
貯金が苦手、という人であれば毎月の口座振替にすることで、言わば強制的に保険料が徴収されるので計画的に貯蓄を進めることができます。
だた昨今、超低金利の影響を受けて返戻率が下がってしまいました。
魅力の多い学資保険ですが、金利の高かった以前と比べると魅力が下がっているように感じるかもしれません。
返戻率とは
返戻率とは払い込んだ保険料に対していくらの割合で戻ってくるのかの指標になります。
満期になったときに自分が払った額よりも多くの保険料を受けることができればそれだけ魅力が高いことになります。
返戻率が100%以上の場合、支払った保険料よりも多くの額を受け取れることを意味します。
学資保険には満期を待たなくても途中でお金がもらえるものや医療保障を充実させているものなどがあります。
返戻率も重要なポイントですが多面的に考慮するといいでしょう。
高い収益率を望むならジュニアNISA
高い収益率でたくさんの収益を上げたい方はジュニアNISAを選んでいる人もおられます。
親の名義で金融機関に子どもの口座を作り、親が株や投資信託で運用を行います。
親の経済力や収入に合わせて、ボーナス時のみの積み立て、お祝い金をもらった時の積み立て、急な出費があったから積み立て額の減少などフレキシブルに対応することができます。
年間80万円、総合計400万円まで積み立てることができますから、子どもの進学には十分でしょう。
進学に合わせていくら貯蓄したいのか、しっかりとした目標を立てるなら、現実的な方法で資金を管理することができます。
ただし、運用に関しては先の見えない部分がありますし、元本を割ってしまう可能性もあります。
収益率は高いですが、ある程度のリスクがあることも念頭に置いておきましょう。
途中解約した時の違い
学資保険とジュニアNISAでは解約時にも違いがあります。
学資保険の場合
途中で解約することも可能ですが、その場合元本が割れてしまうことがほとんどです。
確かに中途解約金が用意されていますが、どの程度戻ってくるのか事前にチェックしておく必要があります。
ジュニアNISAの場合
一方ジュニアNISAの場合は運用なので、いつでも中止することができます。
しかし、原則18歳までは出金できないので途中出金の場合は過去にさかのぼり、利益分が課税対象となり支払われます。
積み立てNISAや通常のNISAの場合、途中出金の制限がないものも用意されており、それらと比較してみてもいいでしょう。
税制面の優遇の違い
どのくらいの税制優遇が受けられるのかも大きなポイントです。
学資保険の場合
学資保険に関していうなら基本的には生命保険と同じ扱いになり、所得控除の対象として計算されます。
また、満期になったときに受け取る保険金も支払った額と受領額の差額の50万円までは課税されないことになっています。
ジュニアNISAの場合
一方、ジュニアNISAの場合、年間の非課税枠は80万円となっており、分配金、配当金、譲渡益なども非課税対象になっています。
具体的には非課税対象の期間は5年なので最大で400万円が対象になります。
ジュニアNISAの狙いと仕組み
ジュニアNISAに先駆けて始まったのが通常のNISAです。
2014年から20歳以上を対象にして始まり、投資額の120万円までが非課税になる仕組みです。
これには投資信託や株式投資も含まれており、運用も兼ねた貯蓄という観点で注目を集めました。
その後、20未満に対しても枠を広げるために始まったのがジュニアNISAです。
ジュニアNISAの仕組み
ジュニアNISAの仕組みを簡単にまとめました。
ジュニアNISAの早わかり表
非課税の対象 | 株や投資信託などの配当金や値上がり益 |
非課税投資枠 | 毎年80万円まで※注意:翌年への繰り越し不可 |
適用期間 | 5年間。売却した後も非課税枠の再利用は不可 |
投資可能金額 | MAX400万円。初年度は80万円。5年間の累積で400万円 |
制度継続期間 | 2016年~2023年まで |
口座を持てる人 | 0歳~19歳まで (成人者は通常のNISAに移行) |
口座管理者 | 親権者 |
開設に当たっての注意点 | 原則18歳になるまでは、引き出し不可(例外あり) |
1人が持てる口座は1口座。金融機関の途中変更は不可 | |
同じ証券会社に親権者の口座あること |
ジュニアNISAの狙い
ジュニアNISAの狙いは大きく分けて2つあります。
親から子どもへの資金移動
ジュニアNISAの狙いは非課税対象の枠を広げることだけではありません。
まず、最初の狙いは親から子どもへの資金移動です。
未成年の子どもが多額の資金を運用することは現実的に不可能なので親が代わりに運用します。
その結果、株や投資信託などリスク資産が増加し、投資市場が促進します。
また親から子への贈与になるため、次の世代へと資金が受け継がれていきます。
株式市場の潤滑化
NISAの口座開設の影響で株式市場は活性化し、市場に流れるお金も莫大なものになっています。
ある試算によるとジュニアNISAの投資が行われた場合、全体の5%程度が利用者であったとしても約6,000億円もの資金が流れ込むともいわれています。
これだけ市場に大きにな影響を与える要素は多くなく、ジュニアNISAの影響力の大きさが垣間見れます。
ジュニアNISAの賢い活用方法
ジュニアNISAは子どものために準備されたものですが、実際未成年が運用してお金を増やすことは難しいでしょう。
現実的な考え方するならNISAが拡張したものと考えるのが妥当でしょう。
そのため、賢い活用方法も通常のNISAと似ており、最大5年間非課税という長期スタイルに適した運用仕様になっています。
インデックスファンドなどの投資信託を使って毎月積み立てたり、5年間寝かせておくスタイルが効果的でしょう。
加えて、高分配の投資信託や高配当の株なども非課税対象のため株主優待としても人気のようです。
学資保険とジュニアNISAのメリットデメリットを比較
学資保険のメリット
学資保険は子どもが進学する時期に合わせて教育信金を準備する、貯蓄型の保険です。
基本的には満期時に保険金が支払われますが、保険のタイプによっては祝い金や学資金が配当されることもあります。
様々なタイプがある学資保険ですがメリットを考えましょう。
親が亡くなると保険料の支払いが免除
学資保険の大きなメリットの人るは親が亡くなった場合、保険料の支払いが免除されることです。
まさに「保険」という名称がしっくりきます。
また、保険料の支払いが免除されるだけでなく満期保険金や祝い金などは予定通り子どもに支払われます。
万が一の時も子どもがしっかりとした教育を受けられるように準備したい親御さんに人気です。
ほぼ強制的に貯蓄が行える
子どものために貯蓄してあげたいと思いながらも家計が苦しくなると少し拝借したくなります。
学資保険のメリットの一つはほぼ強制的に学費貯蓄が行えることです。
学資保険の資産はほかの資産と完全に分離しているので混ざることがありません。
教育資金の準備は15~18年間にかけて行い続ける必要があるので、順調な時も苦しい時も強制的に貯蓄されていくのは貯金が苦手という過程にとっては大きな助けになるでしょう。
また、学資保険という名称からも「子どものためのお金」という心理が働きやすいのでついつい使い込んでしまうことを避けられます。
払い込んだ保険料以上のお金が受け取れる場合もある
学資保険の場合、払戻率というのがあり100%以上の場合、支払った保険料よりも多くの額を満期の時に受け取ることができます。
保険には学資金、祝い金、満期保険金がありますから総額の受取金額がどのくらいになるのか事前に抑えておくといいでしょう。
例えば、払戻率が110%の場合、支払った保険料よりも10%多く受け取ることができます。
払戻率の計算方法
受取総額÷払込総額×100
それだけでなく学資保険は生命保険控除の対象にもなるため、年末調整時に活用することが可能です。
払戻率だけではないメリットがあるのです。
学資保険に向いている人
学資保険は少額を少しずつ積み立てていくタイプなので、夫婦片方だけが働いている家庭の方が適しているかもしれません。
月々1~2万程度であれば夫、または妻だけの働きでも貯蓄ができるでしょう。
また、会社で健康保険に加入しているサラリーマン男性の場合、妻の生命保険の代わりとして妻の名義で加入することもあるようです。また、女性の方が長寿のため妻が年下、または同い年の場合、妻名義の方が保険料を抑えることもできます。
ただ、現状は低金利政策が続いているので、ある程度の経済力がありリスク管理も行えるのであれば積み立てNISAで運用する方法も効果的です。
積み立てNISAは非課税期間が20年あるので投資上限額が40万円であっても十分にコツコツ貯金を続けられそうです。
学資保険のデメリット
途中解約の場合、元本割れになる可能性あり
途中で学資保険を解約すると、支払った保険料よりもかなり少ない額しか返ってこない場合があります。
中途解約の場合、解約払戻が行われますが手数料が引かれたり、契約からの期間が短いと元本を大きく下回る額しか返ってこないことがあります。
子どもの進路変更などはよくあることですから、将来を決め込んで学資保険だけで準備するのは少しリスクがあるでしょう。
個人向け国債や定期貯蓄・財形貯蓄を組み合わせて、いつでも現金に戻せる対策も必要です。
低金利の時は利益配分が少ない
学資保険は長期固定金利商品のため、利益配分は金利によって左右されます。
そのため、現状のような低金利政策の下では配分量が少なくなります。
保険会社が破綻した場合、支払者を保護する制度は備えられていますが、満額時の支払金や学資金などが減額される可能性もあります。
ジュニアNISAのメリット
相続税対策で年間80万円が非課税枠
ジュニアNISAを利用すれば年間80万円が非課税対象になり、相続税対策として利用できます。
もともと教育資金の場合、都度贈与や特例制度を活用すれば1500万円以上のお金を子どもに送ることができます。
しかしその場合、お金を受け取った子どもは30歳までに使い切る必要があるなどの複数の条件をクリアする必要があります。
加えて都度贈与制度を活用するとしても、必要な額を必要な時にだけ、というルールがあるので、生まれたばかりの子どもに将来のために、と言って120万円以上の額を贈与すると「現時点ではそれほどの額は必要ではない」と判断され課税対象になってしまのです。
ジュニアNISAであれば新生児であっても年に80万円までの資金提供が可能になっており、5年間運用するなら400万円の利益が非課税、相続税も無しで子どもに引き渡すことができます。
子どもに投資について教えることができる
ジュニアNISAは子どものために開設するものであり、子どもが将来的に投資に触れる機会を作ることにもなります。
ジュニアNISAの口座を開設すると、子ども用の課税未成年口座が同時に開設されます。
5年間の運用が終わったときに続けてジュニアNISAの非課税枠で運用を継続するかどうかを選択することができます。
子どもが20歳を超えているなら成人向けの口座に移行され、ジュニアNISAの資産もそのまま移行されます。
つまり、親が準備してあげた土壌を使って子どもが資産運用について学ぶことができ、お金の使い方、増やし方など学校の授業では学ばないことを学習することができます。
これらかの社会、金融リテラシーが重要になってくると言われていますから、投資を身近な存在として用意してあげられるのは大きなメリットです。
制度終了後もロールオーバーが可能
ジュニアNISAの適応期間は2023年までとなっており、その年以降は年齢制限が条件を満たしていても新規の開設はできないことになっています。
しかし、継続管理勘定を活用することで資産をロールオーバーすることは可能です。
制度終了後もジュニアNISAを利用していた20歳以下の未成年が、そのままジュニアNISAの資産を非課税で運用するために用意されたのが継続管理勘定です。
ただし、新規の買取はできないことになっており、売却のみが可能です。
ジュニアNISAのデメリット
途中で引き出すと課税対象になる
ジュニアNISAの場合、特別な事情がない限り名義人が18歳になるまでは引き出せないことになっています。
特別な事情とは火災や倒産などです。
それら以外の理由で資産をジュニアNISAから引き出すと課税対象になります。
払い出し期間をさかのぼり、以前の利益に対して課税されてしまいます。
また、ジュニアNISAの途中引き出しは口座を解約することと同じなので、再度ジュニアNISAを開設する時は新たに手続きを踏む必要があります。
途中で金融機関が変更できない
以前、通常のNISAも口座を開設したなら金融機関を変更することはできませんでしたが、今は変更され、一度だけの変更が認められています。
しかし、ジュニアNISAの場合、金融機関の変更は認められておらず、どうしても変更したい場合は口座を解約する必要があります。
ジュニアNISAの口座を解約した場合、すでに発生している利益が課税対象になります。
また、新たに口座を開設するためには1~2カ月程度の期間が必要になるため、時間とお金をロスすることになります。
事前にしっかりと金融機関を選んでおくことでデメリットを避けることができます。
ジュニアNISAに適している人
ジュニアNISAは非課税期間が5年と短くなっているので、短い期間で大きく積み立てていく必要があります。
そのため、共働きの家庭や大きめのボーナスが入るような家庭に適しているでしょう。
また、ある程度の年齢を重ねた夫婦の場合、年に合わせて収入も大きくなってきますし、貯蓄のベースもたくさんあるでしょうから、ジュニアNISAが適していると思われます。
また、親の年齢が高ければ定年退職と教育費の必要時期が重なることもあり、教育費と老後資金を同時に準備する必要もあります。
親名義で「積み立てNISA」を開設し、子ども名義で「ジュニアNISA」を用意しておくなら、どちらも非課税で運用することが可能になります。
また、中学受験を検討している場合、年間100万円以上の教育費がかかりますから、短期間でしっかり貯蓄できるジュニアNISAが適しているでしょう。
積み立てNISAとジュニアNISAの違い
積み立てNISAの大きな特徴は最大20年間の積み立てが可能であり、ジュニアNISAの5年と比較してもまさに積み立て、という名称がしっくりきます。
ジュニアNISAが始まってから2年後に開始された積み立てNISAは非課税投資枠が年40万円までと低く設定されています。
また、預けられる商品は上場株式投資信託や公募株式信託に限られており、ロールオーバー制度がないことも大きな違いです。
積み立てNISAとジュニアNISAの比較
積み立てNISA | NISA | |
非課税投資枠 | 年間40万円 | 年間120万円 |
非課税期間 | MAX20年 | MAX5年 |
口座開設期間 | 2037年 | 2023年 |
非課税投資総額 | MAX800万円 | MAX600万円 |
対象商品(仮予定) | 一定の要件をクリアした投資信託 | 投資信託や上場株式 |
学資保険を選ぶ時のポイント
学資保険とNISAの併用
今回ご紹介したように学資保険、ジュニアNISA双方にメリットとデメリットがあります。
それらの相殺する方法の一つが学資保険とジュニアNISAを併用することです。
双方のメリットを生かしつつ、デメリットの影響を最小限に抑えることができるでしょう。
例えば、月々3万円の教育費資金がある場合、学資保険に1万円、ジュニアNISAに2万円と資金を振り分けることで両者を併用することが可能です。
ただし、この方法を取り入れるためには収益性と安全性のバランスをしっかりと検討したうえで行う必要があります。
安易に行うと、計画していたよりも資金がたまらなかったり、運用を失敗してしまう可能性もあります。
様々な要素を多面的にとらえることで効率よく資金を運用することが可能になります。
運用の専門家に相談
資産の運用は家族や子どもの人生を大きく左右するものになります。
十分に調べたとしても自分や家族だけでは決定するのが難しい時もあります。
そのようなときは信頼できる専門家に相談してみましょう。
どのくらいの資金があり、目標額はどのくらいなのかを提示すると明確な指針を与えてくれるでしょう。
どのようなところで相談できるのか代表的なものをご紹介します。
銀行
給与の振り込みや税の支払いなどで馴染みのある銀行でも資産運用の相談に乗ってくれます。身近な存在なので気軽に自分の計画を話すことができるでしょう。
もし、ジュニアNISAを検討しているのであれば、子ども名義の口座を開設する必要がありますから、銀行に相談するならそのまま口座開設まで手伝ってくれます。
ただし、証券会社では株式も取り扱っていますが、銀行の場合は投資信託に限られてしまうため運用の幅が狭まってしまいます。
しかし、運用になれていない方の場合、選択肢が多いと逆に迷ってしまいかねませんから、ある程度幅が狭まっている方が決めやすいかもしれません。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは資金運用の専門家であり、実際的なアドレスをしてくれます。
フリーで活動しているプランナーの場合、中立的な立場で物事を判断して、銀行・証券会社・保険会社などを精査し、あなたに合った商品を提示してくれます。
信頼できる友人にファイナンシャルプランナーを紹介してもらうなどして、相談してみるものいいでしょう。
証券会社
ジュニアNISAを中心に相談したいのであれば証券会社がおすすめです。
証券会社のメリットは商品の選択肢が多く、自分の家族に合ったスタイルと選べる点です。
もし、投資口座を既に持っているなら、そちらに相談することもできますし、友人を通じて紹介してもらうこともできます。
すこし、ハードルが高く感じるかもしれませんが、具体的なアドレスをしてくれるでしょう。
保険相談窓口
学資保険について相談を希望するなら保険相談窓口があります。
ここは教育資金について無料で相談できる機関であり保険のビュッフェやほけんの窓口などが知られています。
「気軽に相談できる場所がいい」「相談できる専門家を知らない」というのであれば、一度訪問してみるのはどうでしょうか。
店舗での相談だけでなく、こちらで場所を指定することも可能なので緊張せずに話し合えるでしょう。
学資保険とNISAは賢く選ぼう!
今回は学資保険とNISAの違いについてご紹介しました。
それぞれにメリットがあり、賢く活用することで子どものための資金を運用することができます。
共通して言えることは短期的な視野で考えるのではなく長期的な視野で物事を捉えることが運用成功のカギと言えるでしょう。
